【骨膜整体は本当に効く?】“触れただけで治る”は幻想かもしれません
【骨膜整体は本当に効く?】“触れただけで治る”は幻想かもしれません

骨膜
驚きの事実:骨に触れるだけで痛みが消える?
「骨膜に優しく触れるだけで痛みが消える」「骨膜を刺激すると神経が整う」──そんな夢のような言葉で紹介される“骨膜整体”ですが、実はそのほとんどが医学的根拠のない民間療法であることをご存じでしょうか?
驚くべきことに、「骨膜整体」という名称そのものが、医療業界や学術的文献には存在しない造語です。日本整形外科学会、日本理学療法士協会、厚生労働省の公式ガイドラインにおいても「骨膜整体」という治療法の名称や定義は確認されておらず、その多くが民間整体業者によって作られた言葉です。
骨膜整体は本当に“骨膜”を刺激できるのか?
「骨膜(periosteum)」とは、骨の表面を覆う非常に薄く強靭な膜であり、神経や血管が集中する部位です。確かに解剖学的には非常に敏感な組織ですが、それに触れるためには皮膚、脂肪、筋肉層を通過する必要があるため、手技によって“触れただけで刺激する”ということは物理的に極めて困難です。
実際、米国の整形外科ジャーナル(Journal of Orthopaedic Research, 2020年)によると、「骨膜への物理的刺激は、注射針や外科手術レベルの深部操作でなければ到達しない」と報告されています。
つまり、手のひらや指で骨膜を直接調整するという主張は、ほとんどの場合、非現実的なフィクションなのです。
骨膜整体は造語である:専門家も警鐘
「骨膜整体」という言葉は、あたかも医学的な施術であるかのように感じられますが、実際には国家資格者の医師、理学療法士、柔道整復師、鍼灸師などが使用する正式な医学用語ではありません。
公益社団法人日本理学療法士協会の広報によると、「骨膜整体という名称は解剖学的定義にも、治療プロトコルにも該当しない。あくまで民間療法に属する独自の呼称と考えられる」とされています。
数字で見る危険性:本当に“骨膜”が原因なのか?
「骨膜の癒着が痛みの原因です」と説明された経験を持つ方もいるかもしれませんが、ここで重要なのは、それが本当に正しい診断か?という点です。
2023年の厚生労働省の「慢性腰痛の原因調査」では、慢性腰痛患者における主な原因は以下のように分類されています:
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筋・筋膜性:48%
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神経由来(坐骨神経痛や脊髄疾患など):25%
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椎間板性:14%
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その他:12%
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骨膜性疼痛:1%未満
つまり、痛みの原因が“骨膜の癒着”による可能性はほとんどないというのが統計から明らかになっているのです。
それにもかかわらず、「すべての痛みの原因は骨膜です」と言い切る整体院には注意が必要です。
リスク:医学的判断を遅らせる危険性
骨膜整体を過信した場合、次のようなリスクが考えられます:
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整形外科や神経内科での正しい診断を受ける機会を失う
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脊柱管狭窄症やヘルニアなどの進行性の疾患を見逃す
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根本原因にアプローチできず、慢性痛が悪化する可能性
さらに、治療効果が曖昧なまま高額な施術を継続することで、経済的にも精神的にも負担が大きくなってしまうケースも少なくありません。
どう向き合えばいいのか?
もちろん、「骨膜整体を受けたら少し楽になった」「眠りやすくなった」といった感覚を全否定するわけではありません。
施術を受けることで副交感神経が優位になり、リラックス効果や一時的な痛み緩和が得られる可能性は十分にあります。
重要なのは、「骨膜整体は医学的治療ではない」という前提を理解したうえで、必要に応じて医師の診断や画像検査と併用することです。
治療はあくまで多角的に考えるべきであり、「1つの民間手技ですべてが解決する」などという魔法のような方法は存在しません。
まとめ
骨膜整体という言葉には、一見魅力的な響きがあります。しかし、その効果や理論には医学的裏付けが乏しく、リスクを伴うケースもあることを知っておく必要があります。
治療選びで大切なのは「根拠に基づいた選択」。身体のサインを正しく受け止め、信頼できる専門家と共に回復を目指しましょう。