【カウンターイリテーションの真実】なぜ患部を押さずに痛みが和らぐのか?
【カウンターイリテーションの真実】なぜ患部を押さずに痛みが和らぐのか?

神経
「痛いところは触らない方がいい」——これは一見、直感に反します。しかし整体の現場では、実際に“触れずに痛みを軽減する”という施術法が存在します。その鍵がカウンターイリテーション(Counter Irritation)です。
この言葉に聞き覚えがない方も多いかもしれませんが、実は私たちは日常の中で無意識にこれを使っています。たとえば、火傷した指をすぐに冷たい水で冷やす、膝をぶつけて反射的にさする、肩こりに温湿布を貼る——こういった行動がすべて「カウンターイリテーション」に該当するのです。
■ どうして痛みが和らぐのか?
この現象は、1965年に発表されたゲートコントロール理論(Gate Control Theory)によって説明されます。皮膚や筋肉には、異なる種類の神経線維(太いAβ線維と細いC線維)が存在します。カウンターイリテーションでは、太い神経線維に刺激を与えることで、痛み信号を伝える細い神経線維の通り道(ゲート)を一時的に閉じることができるのです。
つまり、「脳に届く痛みの信号を上書きする」ことで、一時的な鎮痛が可能になるというわけです。
■ 驚きのデータ:
カナダ・McGill大学の研究によれば、腰痛患者の67%が、患部ではなく周辺部の軽い刺激によって痛みが軽減したと報告されています。
さらに、アメリカ疼痛学会(APS)の調査では、対抗刺激による鎮痛効果は約20〜30分持続することがわかっています。
これは、「痛みの場所=原因の場所」ではないことを意味します。つまり、真の原因が患部とは別に存在する可能性があるという重要な示唆でもあります。
■ リスク:使い方を間違えると逆効果に
一方で、カウンターイリテーションには注意すべきリスクもあります。例えば、神経の圧迫や炎症がある場合に対抗刺激だけで一時的に痛みを抑えてしまうと、根本の異常に気づかず悪化することがあります。
また、家庭用のEMSやマッサージ機器を過剰に使用すると、痛覚過敏(セントラルセンシタイゼーション)を引き起こし、慢性痛を助長してしまう恐れもあります。
「気持ちいいから」「少し楽になったから」と自己判断で済ませてしまうと、治るタイミングを逃してしまう可能性があるのです。
■ 安心ポイント:根本改善へと導く活用法
当院では、カウンターイリテーションを“本質的な施術の前段階”として活用しています。
まず、痛みによって防御反応が強く出ている筋肉や神経系を穏やかに鎮静化し、体が受け入れやすい状態に整えてから深部の矯正や筋膜調整に移行していきます。
これは「怖さ」「痛さ」なしで施術を行うためにも大切な工程です。脳の防御反応を外すことで、可動域を引き出しやすくなり、より精度の高い矯正が可能となるのです。
一時的に痛みをごまかすだけではなく、本来の神経の通り道や筋肉の連動性を取り戻すことを目的とした、安全かつ効果的な技術です。
■ まとめ
カウンターイリテーションは、正しく使えば痛みのケアに大きな力を発揮する方法です。しかし、それはあくまで「本施術への橋渡し」であり、「ごまかしの手段」ではありません。
もし、長引く痛みや慢性症状にお悩みで「何をしても変わらない」と感じているなら、一度当院の施術で痛みの正体を見極める体験をしてみてください。